2012/01/16

管啓次郎著『コロンブスの犬』──アフロブラジルが近くなる

昨日はひさしぶりに都心へ出かけた。夕暮れの表参道駅からとことこ歩いて、曲がる角をまちがえて、引き返し、やっとたどりついたレイニー・デイ・ブックストア&カフェ。

 文:管啓次郎+写真:港千尋による『コロンブスの犬』(河出文庫)が出たことを記念して開かれたイベントは、時間も内容も予想をはるかにうわまわり、たっぷり中身のつまった話だった。管さんも、港さんも、そして旦さんも80年代初めからかかわってきたブラジルという国と、その文化と、都市と、音と、音楽と、言語と、強盗に襲われたときのことなど、もろもろ、もろもろの、エッセンスがぎゅっと詰まった話は、聞いていてまったく飽きなかった。いや、じつにおもしろかった。

 それにしても、この『コロンブスの犬』は、じつは、今回はじめて手にした管さんの本で、彼がまだ20代のころ書いた初期の作品。スピード感のある文体にぐんぐん引き込まれる快感がある。ほとんど、どこから読んでもOK というフレンドリーな開放性が特徴。管啓次郎という人の仕事はここからはじまったのだな、ということがよくわかる。まさに原点ともいうべき本だ。いろんな意味で、とってもお薦めです。

 以前から気にはなっていたけれど、あまり縁のなかった「ブラジル」という地球上のひとつの地域が、昨夜ぐんと身近になったような気がした。
 ありがとう、みなさん!



 そして今朝、なんの気なしにクリックしたサイトで見つけた番組に、ついつい、食い入るように見入ってしまった。それがこれ!
 アフリカン・アメリカンの文化を研究してきたヘンリー・ルイス・ゲイツがブラジルという国をたずね、その奴隷制の歴史といまを映像により、さまざまな人へのインタビューで描いていく53分。映像は昨日の話とみごとにクロス! アフリカン・アメリカンということばは、なにもアメリカ合州国に限定されるものではなく、むしろ数百倍のアフリカンが南米に船で運ばれた歴史的事実を教えてくれる。
(それにしても、このゲイツという人、どこかで耳にした名前・・・と思っていたら、2009年に米のニュースをにぎわした、「窓から自宅に入ろうとして、近所の人に通報され、逮捕されたアフリカン・アメリカンの教授」でした!)