E. Costello : I believe in what does not need to believe in me.──J. M. Coetzee

2009/06/12

「オン・ザ・ルンバ・リヴァー」──ジャック・サラザン監督

「On The Rumba River」──by Jacques Sarasin

旧ザイール、現コンゴ民主共和国の音楽については「リンガラ」くらいしか思い浮かばない「シロウト」ですが、ルンバと呼ばれるキューバ発祥の音楽には、もちろん、いろんなものが含まれているのは知っています。根幹には、アフリカから大西洋をわたった人たちが創り出した「アフリカン・アメリカン文化」があります。
 この映画は「ルンバ・リヴァー」という語がタイトルに入っていますが、出てくるのはコンゴ川です。つい最近まで地図にはザイール川とも書かれていました。そこに浮かぶ、いまにも壊れそうな、旧式の船がなんとも印象的。

1960年前後、コンゴは独立のために、初代首相になったルムンバを初めとして多くの人が血を流しました。この映画の主人公、ウェンド・コロソイは1920年代の生まれで、独立当時は一世を風靡していたミュージッシャン。ところが、動乱のとき彼は逮捕され、ルムンバは殺されてモブツが大統領になった。以来、音楽の世界から遠ざかっていた彼が、モブツ亡きあと、音楽シーンへ復帰する。この映画はその物語を「記録」しています。
 なかなか一筋縄ではいかない映画ですが、コンゴ川対岸のブラザヴィルから盟友が背広にネクタイ姿でぴしっと決めて、ウェンドを訪ねてくるあたり(ウーン、どんなドラマが背後にあったのかなあ、いま彼はなにをしているのかなあ、と思わず考えてしまいましたが)、複雑な歴史的背景がここには埋もれていることが推測できます。

 それにしても、「コンゴは内戦によって400万人の人が死んだ」と字幕が流れると、打ちのめされる思いがします。ものすごい人数です。90年代、あるいは2000年以降も紛争は続いていますから。それが外部に適切に報道されるかどうかを決めるのは、決して巻き込まれた人たちの「数」ではないことを、この数字はよくよく物語っている。
 
 とはいえ、この映画には貴重なシーンがたくさんあります。道路で遊ぶ子供たちの姿が一瞬、見えたり、家々の軒先に綱から下がるたくさんの洗濯物、ポリバケツ、鶏肉の煮物、でっぷり太ったアフリカンママたちが着る素敵なプリントのドレス、壊れそうな家々の壁にペンキで描かれた「SHOP」という文字、ずらりとならぶ錆びたトタン屋根、ごぼっと穴のあいた下水路、ゆったりと流れる広い川の水に揺れながら川下へ押し流されて行く植物。そういった、一見どうでもよさそうな細部が、私にはとても面白かった。屋外のカフェ風のテーブルにならぶ白い椅子が、ハイチの街角の椅子とそっくりおなじ、というのも面白かった。フランス製なんでしょうか。

 ちなみに、先月出たばかりの『世界中のアフリカへ行こう』には、この国出身の在日コンゴ人、ムンシ・バンジラ・ロジェさんの貴重な話「コンゴはどうして貧しいか」が載っています。