今年もまた、窓の向こうの緋寒桜に、つぐみがやってくる季節になった。
無残なかたちに枝を伐り取る電動鋸の音が絶えない時代になって、それでもこの緋寒桜だけは魔の手を逃れて、寒風に長い枝をはたつかせている。てんでに伸びたその細い枝先の、開きかけた花をめがけて、大ぶりのつぐみがやってくる。
遠目には枝と見分けがつかないけれど、枝をしなわせる鳥の動きで、ああ、また今年も、と思うのだ。胸のところに霜降り模様をつけたつぐみ。甲高い声でにぎやかに鳴き、糞を落としていく。緋寒桜の花の色は、咲き匂う紅梅に負けないほどの濃いピンク。
ローレルの木も花芽がふくらんできた。昨秋から、しっかり準備していたのだ。一ミリほどの半透明の球を、暗紅色の薄い皮が包んでいる。花芽は、そのままの大きさで秋をながめ、冬をやりすごし、開花のときを待っている。ちいさな拳をしっかり握り締めて、長い時間を耐えてきたのだ。
日差しもだんだん足が短く、強くなってきた。朝夕の寒暖の差の大きさに、人間たちは身を縮め、若い生き物たちが活気づく。
ちかごろは、なんだか猫も落ち着かない。