無残なかたちに枝を伐り取る電動鋸の音が絶えない時代になって、それでもこの緋寒桜だけは魔の手を逃れて、寒風に長い枝をはたつかせている。てんでに伸びたその細い枝先の、開きかけた花をめがけて、大ぶりのつぐみがやってくる。
遠目には枝と見分けがつかないけれど、枝をしなわせる鳥の動きで、ああ、また今年も、と思うのだ。胸のところに霜降り模様をつけたつぐみ。甲高い声でにぎやかに鳴き、糞を落としていく。緋寒桜の花の色は、咲き匂う紅梅に負けないほどの濃いピンク。
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日差しもだんだん足が短く、強くなってきた。朝夕の寒暖の差の大きさに、人間たちは身を縮め、若い生き物たちが活気づく。
ちかごろは、なんだか猫も落ち着かない。