「少年の見開かれた目を思うたび、わたしの表情は醜悪になっていく。それを治す薬草は、この岸辺の、いったいどこに生えているのだろう」
帯の挿画はタダジュンさんの銅板画。
初めて見るのに、なにかを思い出す、
記憶にじんわり沁み入るような、
不思議は感じの絵です。
(池澤夏樹個人編集 世界文学全集第1期11巻、河出書房新社刊、2008)
この『鉄の時代』は1980年代後半のケープタウンを舞台にした小説です。南アフリカのアパルトヘイト体制末期の激動の時代。J・M・クッツェーは、20代にいったんは去った南アフリカへもどる決意をし、以来、その地に住みつづけて数々の傑作を発表してきた作家です。これは当時の社会状況と拮抗するような、緊迫感にみちた筆致でしたためた作品。「数々の偽装を凝らした」クッツェー作品の、かなめに位置する作品といえるでしょう。
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