2018/05/28

6月9日にイベント──J・M・クッツェー『モラルの話』刊行記念

J・M・クッツェー『モラルの話』の日本語訳(人文書院)がついに発売になりました。さっそくイベントのお知らせです。

日時:6月9日(土)午後3時から
場所:下北沢のB&B

第3回「境界から響く声達」読書会
J.M.クッツェーをくぼたのぞみさんと読む 

  都甲幸治 ×くぼたのぞみ 

   詳しくはこちらへ!


 都甲幸治さんとクッツェーの話をするのは、2014年夏の自伝的三部作『サマータイム、青年時代、少年時代』(インスクリプト)の刊行記念の会と、2015初夏に新宿紀伊国屋南口店で開かれた『マイケル・K』の岩波文庫化記念トークにつづいて3度目です。
 今回は都甲さんが主役で、「境界から響く声達」という英語圏文学を読んでいく読書会に誘っていただきました。シリーズの第3回。
 カリブ海から始まり、チカーナ文学へ進んだこのシリーズ、今回の『モラルの話』は舞台がオーストラリア、フランス、スペインですが、クッツェーの出身地は南アフリカ。ここ数年のこの作家の行動範囲を考えると、3つの大陸を、北を介さずに横に結びながら、アメリカスはラテンアメリカまで延長。

  クッツェーが提唱する「南の文学」活動とその趣旨については、このブログでも何度か触れてきましたが、この『モラルの話』は5月17日にまずスペイン語で出ました。彼の第一言語である「英語ではない」というところが決め手です。アルゼンチンの編集者と翻訳家の仕事であることも重要です。それを追いかけるように日本語訳が5月29日に出ましたが、この意味はこれから日本語読者が考えていくことになるでしょうか。

スペイン・ツアーの日程表
英語という大言語を批判するクッツェーは、英語が行く先々で小言語を押しつぶすやり方が好きではない、と1月にカルタヘナで明言しました。この身振りは5月末にスペインのどこでイベントをするかを見ると納得できます。まず首都マドリッドで2日間、そしてバスクのビルバオ、さらにカタルーニャのグラナダへ、という行程です。バスクは長いあいだ独立闘争をしてきた地域、カタルーニャはつい最近独立の住民投票の結果をスペイン本国が弾圧した土地です。
 
こうして、クッツェーは「北と南」というパラダイムを可視化させながら、「南の文学」を「las literaturas del sur」と表現します。あくまで複数形です。「グローバル・サウスの文学」とひとくくりにせずに、個々の地域の、個々の言語による複数の文学を可視化させようとします。スペイン国内の北と南にも光をあてている。バスク語とカタルーニャ語はスペイン語(カスティーヤ語)とは異なる言語ですから。そこは要注意!
イベントでクッツェー自身が語るメッセージがどんなものだったか、Google でもtwitter でもキーワードを入れると即座に写真入りでリンク先が出て来ます。多くのスペイン語の雑誌や新聞が伝えていますので、ぜひ! Google訳でもヨーロッパ言語間なら、まあ、意味は把握できる!

2018.5 Madrid
「世界」というとき、人は何をイメージするでしょう? 「世界文学」というときはどんな作家や詩人の作品をイメージするでしょう? その「世界」のなかに日本語文学はいったい、入るのか、入らないのか? クッツェーは常に刺激的な視点を指し示してくれます。そして、結論は各自で出しなさい、と突き放します。ここがキモですネ。