今日発売の「すばる 6月号」に載っているのは、斎藤真理子さんへ、くぼたのぞみが書く3通目の手紙です。
先月号の手紙で真理子さんから、クッツェーの『青年時代』の切り抜きの意味を質問されたので、お返事としてそれについて書きましたが、予想通り、書いているうちにどんどんハマって、クッツェー祭りになってしまいました(笑)。
『青年時代』はクッツェー自伝的三部作の第2巻で、2014年にインスクリプトから出た『サマータイム、青年時代、少年時代──辺境からの三つの<自伝>』に入っています。
第1巻と第3巻に挟まれて、やや影が薄い作品のように見えますが、どうして、どうして、改めて読むと、これはサンドイッチの中身のようにコクがあって、噛み締めると味がにじみ出てくる作品です。どこまでもドライな筆致で書かれていますが、若いってこういうことだったよなあ、と納得の一冊です。納得だけではなく今回は『ダスクランズ』を翻訳した後初めて読んだこともあって、新たな発見がいくつもありました。
この第2部は、自分を死んだことにして、生前の友人や恋人へのインタビュー構成で読ませる第3部『サマータイム』に比べると、やや地味に見えますが、青春の嵐をくぐり抜けた人がじっくり読むと、きっとジーンとくること間違いなしです!