北半球が真冬のいま、南半球は真夏だ。
1940年2月9日、真夏のケープタウンでジョン・クッツェーは生まれた。そして今年2020年に、彼は80歳の誕生日を迎える。
南アフリカの東ケープ州にグレアムズタウンという都市がある。ローズ大学の所在地だ。そこにAMAZWI (ズールー語でWORDの意味)という文学館ができる。ここは、NELM(National English Literature Museum)という文学館だった。今回あらたに改修されて総合的な施設に生まれ変わるらしい。そのこけら落としとして、クッツェーの誕生日とその翌日にフェスタを行う予定だとか。そこから招待状がきた。
NELMはとても懐かしい名前だ。1990年にクッツェーの最初のビブリオグラフィーを発行したところで、Kevin Goddard と John Read による編集、序文はなんとあのTeresa Doveyが書いている。ラカンの心理的分析をもとにして、初めてまとまったクッツェー論を書いた人だ。
1991年に『マイケル・K』の訳書を作家に送ったとき、このビブリオグラフィーについて質問すると(当時は紙の手紙だった!)、ジョン・クッツェーは親切にこの冊子を送る手配をしてくれた。だから、いまもわたしの手元に1冊ある。右の写真がその表紙。
2003年にノーベル文学賞を受賞したとき、彼の名前をジョン・マイケル・クッツェーだと伝えた「タイムズ紙」や「ニューヨークタイムズ紙」の誤情報に対して、あるいはそんな「北」の大手新聞の情報を鵜呑みにした「世界文学事典」の類まで、それは誤りだと主張するための貴重な資料となった。
フェスタでクッツェーはいつものように朗読をするらしい。やっぱり新作のThe Death of Jesus からだろうな。
南アフリカは2011年11月にケープタウンを訪れて以来ずっと、もう一度行ってみたいなあと思いつづけてきた土地だが、この年齢で真冬の東京からいきなり真夏の南アへ行くのは……体力的に……やっぱり。こういうときの自分の体力のなさは本当に歯がゆいけれど、残念ながら涙を飲んだ。
このイベントのあとクッツェーはスペインに行ってなにやら賞を受けるらしい。クッツェーのスペイン語圏重視はまだまだ続くのだな。それからオランダにも行くのだろうか。70歳の誕生日はアムステルダムでコッセ・パブリッシャーが中心になって3日にわたるイベント「これがクッツェー?」が開催された。
2009年秋に『サマータイム』が出てブッカー賞ファイナルにノミネートされた直後だったから、クッツェーは『サマータイム』から「マルゴ」の章を朗読したんだった。オランダで読む章がジョンのいとこの「マルゴ」の章であること、本文中に「We white」という表現があることなど、なるほど、とうなずける。クッツェーはまず最初にオランダ語でこれから読む内容についてちょっとコメントしている。オランダ語を話すクッツェー、めずらしい動画だ。再度ここにも埋め込んでおこう。
そしてアムステルダムのこの2010年2月に開催された3日にわたるイベントでは、2018年の『モラルの話』に入ることになった短編「老女と猫たち」も朗読していたのだけれど、その動画が見当たらないのが残念!
***
2020.1.28──The Old Woman and the Cats を朗読する動画は、じつはジャイプールでの朗読があるにはあるのだけれど、音割れがひどくておすすめできないのだった。
1940年2月9日、真夏のケープタウンでジョン・クッツェーは生まれた。そして今年2020年に、彼は80歳の誕生日を迎える。
南アフリカの東ケープ州にグレアムズタウンという都市がある。ローズ大学の所在地だ。そこにAMAZWI (ズールー語でWORDの意味)という文学館ができる。ここは、NELM(National English Literature Museum)という文学館だった。今回あらたに改修されて総合的な施設に生まれ変わるらしい。そのこけら落としとして、クッツェーの誕生日とその翌日にフェスタを行う予定だとか。そこから招待状がきた。
NELMはとても懐かしい名前だ。1990年にクッツェーの最初のビブリオグラフィーを発行したところで、Kevin Goddard と John Read による編集、序文はなんとあのTeresa Doveyが書いている。ラカンの心理的分析をもとにして、初めてまとまったクッツェー論を書いた人だ。
1990年刊行のNELMの冊子 |
2003年にノーベル文学賞を受賞したとき、彼の名前をジョン・マイケル・クッツェーだと伝えた「タイムズ紙」や「ニューヨークタイムズ紙」の誤情報に対して、あるいはそんな「北」の大手新聞の情報を鵜呑みにした「世界文学事典」の類まで、それは誤りだと主張するための貴重な資料となった。
フェスタでクッツェーはいつものように朗読をするらしい。やっぱり新作のThe Death of Jesus からだろうな。
南アフリカは2011年11月にケープタウンを訪れて以来ずっと、もう一度行ってみたいなあと思いつづけてきた土地だが、この年齢で真冬の東京からいきなり真夏の南アへ行くのは……体力的に……やっぱり。こういうときの自分の体力のなさは本当に歯がゆいけれど、残念ながら涙を飲んだ。
このイベントのあとクッツェーはスペインに行ってなにやら賞を受けるらしい。クッツェーのスペイン語圏重視はまだまだ続くのだな。それからオランダにも行くのだろうか。70歳の誕生日はアムステルダムでコッセ・パブリッシャーが中心になって3日にわたるイベント「これがクッツェー?」が開催された。
2009年秋に『サマータイム』が出てブッカー賞ファイナルにノミネートされた直後だったから、クッツェーは『サマータイム』から「マルゴ」の章を朗読したんだった。オランダで読む章がジョンのいとこの「マルゴ」の章であること、本文中に「We white」という表現があることなど、なるほど、とうなずける。クッツェーはまず最初にオランダ語でこれから読む内容についてちょっとコメントしている。オランダ語を話すクッツェー、めずらしい動画だ。再度ここにも埋め込んでおこう。
そしてアムステルダムのこの2010年2月に開催された3日にわたるイベントでは、2018年の『モラルの話』に入ることになった短編「老女と猫たち」も朗読していたのだけれど、その動画が見当たらないのが残念!
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2020.1.28──The Old Woman and the Cats を朗読する動画は、じつはジャイプールでの朗読があるにはあるのだけれど、音割れがひどくておすすめできないのだった。