2013/07/05

ジョン・クッツェーとヨシフ・ブロツキイ


「一本の針の内部のように暗い」とブロツキイはある詩のなかで書いている。その一行が彼の脳裏から離れない。もしも彼が集中すれば、本気で集中すれば、毎夜毎夜、完璧な注意力でがむしゃらにインスピレーションの祝福が降臨するようにすれば、それに匹敵するなにかを彼もまた思いつけるかもしれない。というのは彼のなかにはそれがあり、自分のイマジネーションがブロツキイのものと同色であることを知っているからだ。それにしても、どうすればアルハンゲリスクまでそれを伝えられる?
 頼りはラジオで聞いた詩だけでほかはなにもない、だが彼はブロツキイのことを知っている、知り尽くしている。それこそ詩が可能にすることだ。
                       ── J.M.クッツェー『青年時代』より

 1960年代初頭のロンドンで、孤独に苛まれながら詩人になろうとする若きジョンの姿を、作家クッツェーはこんなふうに描いている。昨日、facebook にも書き込んだけれど、ここにも貼付けておこう。

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2013.7.6 付記:ちなみにクッツェーとブロツキイはおなじ1940年生まれ、ともにノーベル賞受賞作家/詩人。ブロツキイは55歳で早々と他界したが、クッツェーはまだ旺盛に作家活動を突けている。