2009/04/25

どのように永遠のひと時──ファファレーイの詩

現代詩手帖 5月号」に、スリナム生まれのオランダの詩人、ハンス・アントニウス・ファファレーイ(1933〜90)の詩をいくつか訳出しました。

 ファファレーイのことは「現代詩手帖 1月号」でも「世界の波頭」で、詩を引用しながら少しだけ紹介しましたが、今回は詩作品そのものを楽しんでいただけます。翻訳には力を入れました。

 ファファレーイの作品はたいていがサイクルになっています。あるタイトルのもとに、各ページに数行から十数行におよぶ詩句がならび、それが数ページまとまって一篇の詩を構成する、そんな連詩形式なのです。
 今回もフランシス・R・ジョーンズ氏の英訳アンソロジー『忘却にあらがい/Against the Forgetting』(New Directions, 2004)からの日本語訳ですが、すでに入手してある8冊のオランダ語のオリジナルも、行の移り、連の移りの部分など、少しだけ参照しました。それで改めて確認したのは、どうやらオランダ語と英語は、言語としては二卵性双生児みたいな関係にあるらしいということ。面白い。

「宝石のように美しい詩篇は、本を閉じたあとも永く、エコーのように心のなかに響きわたる」とJ・M・クッツェーが述べた、この詩人の澄明な詩のことばをうまく日本語に転換できていることを願って・・・冒頭の部分を少しだけ写しておきましょう。

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「どのように永遠のひと時」より

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  恋する女が
  身をまかせようか、まかせまいか、

  思いあぐねているように、
  一枚のカエデの葉が、ひさしく前から
  落ちかけ、それでもなお
  枝から離れずにいる。

  わたしの唇のうえの水のしずく
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写真はオリジナル詩集『忘却にあらがい/Tegen het vergeten 』(1988)