2008/07/19

安東次男全詩全句集

安東次男のすべての詩、すべての句、代表的な評論が一冊におさめられ、まとめて俯瞰できるようになった。

 ここには安東次男という詩人のエッセンスが、ぎっしり詰まっていて、その作品に使われた日本語ということばの魅力を、あますところなく伝えている。しかも、その無駄のないことば遣いには、まれに見る、硬質な手触りがある。
 この詩人は、その作品行為に対し、完璧であろうとすることをあえて避け、未完であることを目指した。彼はおのれの作品に、そこから次の者が受け継ぐほつれ、つながり、といった「歯型」のような、抵抗感のある触感をこそ刻み付けようとしたのではないか。次の者が受け継ぐ、手がかりとして。それはこの日本という湿地において、なんとか「他者」を迎えようとする、全身全霊をかけた作業の結果ではなかったか、といま、わたしなどは思うのだ。

 表紙には、この詩人が大好きだった色、濃紺の、ざっくりとした布が貼られている。出版されたばかりの、この「安東次男全詩全句集」の内容を以下にあげておく。

 詩集 『六月のみどりの夜は』定本
    『秋の島についてのノオト』
    『人それを読んで反歌という』 CALENDRIER 補遺
     CALENDRIER 定本
    詩集補遺
    詩集資料
 
 句集 『裏山』
    『昨』
    『花筧』
    『花筧後』
    『流』
    句集補遺

 評論  現代詩の展開
    「澱河歌」の周辺
     風狂始末
     狂句こがらしの巻
     鳶の羽の巻
     梅が香の巻

 年譜、解題、著作目録