2023/06/29
プラド美術館を訪れているJ・M・クッツェー
2023/06/23
「恋愛」をめぐる UNLEARN
つい先日も「日本のジェンダーギャップ指数125位 前年より後退、G7で最下位」というニュースが流れたばかり。
ブログ内を検索していたら、ちょうど5年前に書いた「はきちがえのはきだめから脱出するには?」という投稿を見つけた。
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2018年の付記:
備忘としてfacebook に記したオピニオンを転記しておく。ちょっと語調はあらいけれど、それも含めて。希望も含めて。
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2023年の付記:だから対等の人間として相手を見ているなら、「俺の女にしてやる」とか「俺の恋人にしてやる」とか「俺の女房にしてやる」という表現は全く出てこないはずだ。相手のことを深く知りたい、理解したい、という気持ちが相手に受け入れられたとき初めて、相互のやり取りが始まるんだ。一方的な「妄想」に突っ走ってしまわないことが、めっちゃ大切なんだよな。
追記:まあ、人間として対等であることは大前提だけど、恋愛感情のバランスに不均衡があるときは──そしてこれはいつの時代もとても多いんだが──悲しいかな、どちらかに悲恋、失恋が待ってるわけだけどね。でも支配、被支配の関係を示す「俺について来い」とか「お前を幸せにする」といったセリフが横行した時代が、ホント長かった。それって、どんだけ「主従の関係」を反映しているか、足元から考え直したほうがいいよね。いまだに自分の夫を「主人」と呼んでる女性たちも、もちろん男女問わずに「オタクのご主人」という人たちも!
2023/06/18
コンサート:2人のフランツ、青柳いづみこ & 高橋悠治 トークコンサート
備忘のために昨日のコンサートのことを書いておこう。
昨日はひさびさに都心まで出かけた。日比谷の「ベヒシュタイン・セントラム 東京 ザール」で開かれた、青柳いづみこ & 高橋悠治というビッグなピアニスト2人のコンサート。コロナもあけて、フランソワ・クープランとフランツ・シューベルトと聞けば出かけずにはいられません!
2023/06/11
「海外文学の森へ 56」『過去を売る男』:ジョゼ・エドゥアルド・アグアルーザ著、木下眞穂訳『過去を売る男』
東京新聞(6月6日夕刊)のコラム「海外文学の森 56」でジョゼ・エドゥアルド・アグアルーザ著、木下眞穂訳『過去を売る男』(白水社)を紹介しました。
このリレーコラム、最初は「書評より、もっと柔らかく、身近なことも含めてエッセイふうに」という依頼だったように記憶しています。「柔らかく」がうまくいってるかどうかは別として、今回は、むかしのこともちょっと書いたり。
タイトルは、担当の記者の方が付けてくれたものです。
***アンゴラの風に乗って***
「トッケー、トッケー」と鳴くヤモリが壁を這う家に泊まったことがある。小さな娘たちとタイへ旅した遠い昔だ。『過去を売る男』を読んで、アンゴラのヤモリは笑うのか! と溜め息をつく。アンゴラのヤモリの声も聞いてみたかった。そんな叶わぬ旅への憧憬をかき立てる作品だ。
主人公フェリックス・ヴェントゥーラはアルビノの黒人、資料を集めて過去を創作し、それを売ることを生業にしている。ポルトガル移民で古書店主の祖父、その息子が養父、という彼の系譜自体が謎めいている。おまけに家に住み着いたヤモリの語りに遠い記憶が入り込む。このヤモリ、かつては人間だったらしい。
舞台となるアンゴラはアフリカ南西部の大きな国だ。西は大西洋に面し、北はコンゴ民主共和国、南はナミビアに隣接し、かつてはポルトガルの植民地で奴隷の輸出国だった。独立は一九七五年だが二〇〇二年まで内戦が続いた。
六〇年生まれのアグアルーザは、ポルトガル語にいくつかバンツー系言語が混じる環境で育ったのだろう。作品内には渇いた風が運ぶいくつもの微かな声音が響き、鮮やかな色調が揺れる。
南部アフリカにはトカゲ、ヤモリといった動物が登場する神話、民話が多い。ズールー民族の詩人マジシ・クネーネが記録した民族創世神話ではカメレオンが神の使者だし、モザンビークの作家ミア・コウトにはハラカブマ(センザンコウ)が男の内部に棲みつく物語がある。
本書は三十二の短章が深い奥ゆきをもって連なる。過去を買いにきた男、美貌の写真家、浮浪者といった登場人物を天井から眺めるヤモリ。エピグラフのボルヘスが道づれとなり先へ先へと飽きずに読ませる。夢のなかで真実と嘘が一瞬のうちに入れ代わり、過去と現在の境が揺らぐ。
フェリックスがヤモリと語り合うときは、書き留めたくなることばが多い。雲は「夢の出口に見えない?」とか「幸福とは、たいていの場合、無責任だ」とか。
土地に染みついた裏切りの記憶がカラフルな房糸となって、一気にほつれて謎が解ける。その向こうに「アンゴラの海」が見えるだろうか?
くぼたのぞみ(翻訳家、詩人)
PDFでアップできないので、そっくりペーストします。
2023/06/09
オリジナル英語版『ポーランドの人、その他の物語』がオーストラリアからやってきた:翻訳作業備忘録(5)
左がオーストラリア英語版、右が日本語版 |
英語版『The Death of Jesus(イエスの死)』が2019年10月に英米より先に発売されたときも、出版社はText Publishing だった。そのときはコロナ前だったので、日本からもオンラインショップで注文できた。そしてぴたりと発売日にとどいた。ここに書いたように。
ところが今回、そろそろ出るころだなと出版社のサイトを見ると、オンラインショップがない。どうやって買えばいいのか、と問い合わせのメールを出したら、一冊ご好意で贈ってくれたのだ! Gracias!扉 |
さて、この本には日本語訳となった『The Pole /ポーランドの人』の他に5つの短篇が入っている。パラパラめくっていくと、そのうち4つは日本語版『モラルの話』で読めるが、1つだけ新作が入っているとわかった。わお!
The Hope
イギリス版 |
このオーストラリア版と同じ内容のものが、10月にイギリス版として出版されるはずだが、サイトを見るとカバーが寒色系のモスグリーンから暖色系の濃いオレンジ色に変わっていた。そうなのか!The Hope が入る短編集だものなあ!