2021/10/27

『山羊と水葬』(書肆侃侃房)ができました!

 今月は新著のラッシュ。自著が2冊、翻訳が1冊、合計3冊も出るのだ。出たのだ。こんなことは最初で、おそらく最後。

 そのうちの3冊目、『山羊と水葬』(書肆侃侃房刊)が今日とどいた。


 北海道で育ったころの記憶、東京へ出てきた直後の出来事、失語感覚のなかで詩を書いてジャズを聴き、生き延びて、新しい家族をえて、翻訳をこころざし、アフリカなどまで行ってしまって。何度も思い返し、思い直し、ジグザグに記憶を上書きしながら、長らく暖めてきたメモワールが『山羊と水葬』という本になりました。

 フロントカバーの素敵な絵を描いてくれたのは尾柳佳枝さん。帯文を書いてくれたのは岸本佐知子さん。ありがとうございました。データ処理、編集、校正、印刷、製本、いろんな作業を通して本は出来上がる。出来上がってからもまた広報や営業の方々の手を経て、書店を通して読者のところへ届けられる。たった1冊の本が出来上がるまでに、どれほどの人たちの手を経て、どれほどの努力に支えられているだろう。仕上がってきた本を見るたびに、しみじみありがたいと思う。企画編集の最初から最後まで大変お世話になったTさん、本当にありがとうございました。

山羊と水葬』は10月28日発売です。あ、明日ですね!

 新しい本を手にして、秋はしみじみ更けていく。

 

2021/10/20

フンボルト・フォーラムで基調講演をするチママンダ・ンゴズィ・アディーチェ

2021年9月22日フンボルト・フォーラムで基調講演をするチママンダ・ンゴズィ・アディーチェのフルスピーチです。



アフリカからヨーロッパへ持ち去られた美術品について、非常に厳しくも希望にあふれた指摘をしています。瞠目!

2021/10/08

2冊そろい踏み:『J・M・クッツェーと真実』『J・M・クッツェー 少年時代の写真』

 『J・M・クッツェーと真実』に続いて『J・M・クッツェー 少年時代の写真』がやってきた。さっそく2冊ならんで、仲良く記念の写真撮影。

 内容についてはこのブログで何度も触れてきたので省略。

10月15日に白水社から、2冊同時発売です。


2021/10/07

本がやってきた:エッセイ集『J・M・クッツェーと真実』

神無月の7日、ピンポーンとベルが鳴って、ついに本がやってきた。

エッセイ集『J・M・クッツェーと真実』(白水社刊)、10月15日発売。

 曇り空の下で早速の記念撮影。褐返しに近い色の帯をはずすと、クリーム色の地肌が濃紺に近い色へ向かって滲むぼかしが出てくる。「真実」はいつだって表層の奥に隠されていて、目を凝らさなければ見えない、そうクッツェーはいう。見る側の心理や、心の位置が「見えるかどうか」を、ある意味、決定づける。そのぼんやり感がちょっとだけ出ている装幀になった気がする。

 この本は話が始まってからあれこれまわり道をして、結局これ、となって実現するまでに3年近くかかった。とても多くの方々の助力によって実現した企画だったけれど、なんといっても、編集者Sさんの力なしには実現しなかった。みなさん、本当にありがとうございました。

感無量! 

 

2021/10/05

『J・M・クッツェー 少年時代の写真』のカバーも

 白水社のサイトに 訳書『J・M・クッツェー 少年時代の写真』のカバーもアップされました。『J・M・クッツェーと真実』と同時発売です。

 書籍内容の説明もより丁寧なものにバージョンアップ。アマゾンなどネット書店のサイトにもカバー写真が出ました。

 さあ、これで2冊同時発売の準備はほぼすべて整いました。2冊ならべて見ると、感無量です。15歳の少年ジョンが撮影したセルフ・ポートレートと、2014年にアデレードでわたしが撮影してきたクッツェーの写真をもとに、画家に描いてもらったクッツェーのポートレート。2枚の写真のあいだに約60年の時間が横たわっています。

「真実があらわになる瞬間に立ち会うこと、それに興味があったんだと思う。半分は発見されるが、もう半分は創造される瞬間に」 ──J・M・クッツェー

 作家になる前、ジョン・クッツェーが写真家を目指していたことが、J・M・クッツェーという作家の創作方法の原型になっていた。それがこの2冊を同時に出すことで明示できたと思います。

2021/10/04

『J・M・クッツェーと真実』のカバー写真が

『J・M・クッツェーと真実』のカバー写真が版元サイトに出ました。白水社から10月15日発売です。

 一人の書き手が、一冊まるごとクッツェーについて書いた、初めてのエッセイ集。

 クッツェーの作品を偶然、手にした1980年代の終わりから、ここまできた道のりを考えています。長かった、濃密な時間について考えています。

 まだ本そのものを手にしていないのですが、でも、とにかく、本になる、本が出る、まとまった形で読んでもらえる。それが嬉しい。そして、ちょっとドキドキ──そんな感じです。

 表紙に使われているポートレートは、2014年11月にアデレードを訪れたとき撮影した写真をもとに、画家のロドニー・ムーア氏に描いてもらいました。

 散歩に出ると、今季二度目の金木犀の香りが、風にのってほんのり漂っていて…。