2021/05/02

東京新聞(夕刊)「海外文学の森へ」第8回で『ウサギ』について書きました

 今回は、ジョン・マーズデン文、ショーン・タン絵『ウサギ』岸本佐知子訳、河出書房新社刊、について。4月27日の東京新聞(夕刊)です。

 素晴らしい本です。絵本だけれど、絵本だから、ここまで細かく細かく描けるのか、そして想像力による読解を読者に委ねることができるのか、とため息をつきたくなるほどすごい本でした。

 ショーン・タンが24歳のときに描いた絵は、とんがっていて、鮮やかで。ジョン・マーズデンのことばは、「コロンブスが新大陸に到達した500年」を記念する1992年にバリー・ロペスが書いた本を思い出させます。

 1990年代に出た本だけあって、あのころのオーストラリア政府の先住民に対する姿勢も考えることができます。とにかく、謝ったのですよ、それまでの白豪主義でヨーロッパ白人を優先させてきた人種主義を捨てて、政府がこれまでの政策について、先住民に対して謝罪した。歴史的に見て、それはもう間違いなく、画期的なことでした。