E. Costello : I believe in what does not need to believe in me.──J. M. Coetzee

2018/01/20

自転車に乗るデイヴィッド・クッツェー

ケープタウンのロンデボッシュにあるイルマ・スターン・ミュージアムで20日まで開かれている、JMクッツェーの少年時代の写真展について、ニューヨーク・レヴュー・オブ・ブックスに非常に濃密な評が掲載された。

弟デイヴィッド
書き手は南アフリカで1964年に生まれた作家Mark Gevisser (マーク・ゲヴィサー or マーク・ヘフィセル?)で、ターボ・ムベキの伝記を書いたことで有名な作家だ。

 記事の巻頭を飾るジョンの弟デイヴィッド(1943-2010)が自転車に乗る写真がとても印象的だ。クッツェーのメモワール三部作の第一部『少年時代』のほとんどの章に登場するこの3歳下の弟デイヴィッドは、作品内ではたとえばこんなふうに描かれている。ヴスター時代の章だ。

 弟は「七歳だ。張りつめた気弱な笑いをしょっちゅう浮かべ る。ときどき学校で理由もなく吐き戻すので、家まで連れ帰らなければならない
──『サマータイム、青年時代、少年時代』(インスクリプト刊)p87。

動物の解体をするロスとフリーク
しかし、この写真はまたそれとは違うものを物語っているようだ。三部作を一巻にまとめた『サマータイム、青年時代、少年時代』や『イエスの幼子時代』は、2010年に66歳で早々と他界したこのデイヴィッドに捧げられていた。

 ほかにもフューエルフォンテインで猟銃の「尾筒に嵌り込んだ 薬莢をどうしても取り出すことができな」(同書 p99)くなり、相談したロスとフリークは銃に触れたがらない、とあったが、右の写真はまたそれとは違うことを教えてくれる。

 これらの写真を見ると、三部作のなかではもっとも事実に近い書き方をしているとされる『少年時代』もまた、あくまでクッツェーという作家の記憶に、ある脚色をほどこされたメモワールであることが分かる。

スパイカメラで盗み撮りした授業風景
 ジョン・クッツェー自身は1月11日、ミュージアムに姿を見せて『少年時代』から朗読したそうだ。朗読が終わったあと、あれこれ質問したそうな観客を残して、すぐに姿を消したとGevisser は書いている。

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